わかる。
本当に理由はない。ただ、行きたくなくなることがある。
自分の場合だと受験のときになった。ろくに勉強もせずに大学受験となったわけで、試験の結果は連敗となるわけだけど、しかしそれでも大学に入るためには試験を受けなくてはならない。
ある試験の日、唐突に「あ、今日は行きたくない」となった。気がついたら原付に乗っていた。原付に乗ってひたすら西へ。
何故だか山が見たくなった。山に行きたくなった。青梅街道をひたすら西に走ると奥多摩に出る。通勤の車の流れに逆らい、喧騒を離れ、山の中でひとりになりたかった。
特に目的地はなかったが、奥多摩湖に着いたときに「あ、ここでいいや」となった。東京都のほぼ西の端。行くあてのない移動の終着地にするにはもってこい。
途中のコンビニでおにぎりとお茶を買い、ダム湖の脇で食べていると、これまた何故か不意に帰りたくなった。
食べ終えるやいなや再び原付を東へ走らせ、帰宅する。
「早かったね」と親に言われた気がする。試験を受けに行ったには確かに早い。が、気分転換をするには十分な時間だった。
この日受験しようとしていた大学は当然不戦敗で、どうにもならなかったが、最後の最後の某大学の試験でどうにか引っかかり、高校卒業後に大学進学が決まるというギリギリのスケジュールで進路が決まった。
ちなみに不戦敗だった大学は日大で、受けていたらどうなっていたのかなあとは思う。やっぱり落ちてたはずだけど。