タケルンバ卿ブログ

世界の片隅でだらだら生きる貴族の徒然帳

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続々々・被災地を実際に巡っての雑感

 書き終えるのが遅くなりましたが、とりあえずは完結。

 これまで通り最後に雑感をまとめたいと思います。



 過去の雑感と合わせ読んでいただくと流れがよりわかりやすくなると思います。

南相馬はあっという間に動き始めた

 今回印象的だったのは南相馬の変化。あっという間に変わりました。劇的に。そして前向きに。


 高速を降り国道6号線を走り桃内駅に出る。昨年と何ひとつ変わらない風景。福島原発付近では相変わらず高い放射線が出ている。一年の時の流れが感じられませんでした。



 しかし少し北に走ると劇的に変わっていました。線路沿いは整備され、駅もきれいになり、いつでも運転再開ができるかのように。バスの代行運転もはじまり、順調に常磐線は再開に向けて力強く動いている。また道路事情に目を移しても、常磐自動車道は南北につながり、東京方面に出るにも、仙台方面にも不自由はありません。

 緑の風景、田畑の様子。震災の爪あとは随所に残っているものの、それがすっかり過去となっているかのようです。震災という出来事において、現在と過去の間にやっと明確な線引きがなされたと言っていいのかもしれません。

福島原発の問題は残り続ける

 問題は南相馬以南であり、福島原発です。あっという間に南相馬の状況は良くなった。しかしながら、南相馬より南に関しては全く良くなっていません。


 桃内駅と磐城太田駅で明暗が分かれているように、放射線の影響の有無によって明暗が分けられています。

 人が住めるか住めないか。

 すべてはこの一点にあり、この違いによって前向きか後向きの差が出てきてしまっています。放射線の問題が解決されないかぎりは状況の好転は望めず、問題が長引けば住民離れなどにつながり、将来的な展望はますます悲観的なものにならざるを得ません。また、そういう悲観的な将来が実現すると、より地元経済における福島原発・東京電力への依存度が高まるという連鎖が起き、状況の好転へのきっかけが望みにくくなる可能性が高まることも考えられます。

人を呼びこもうとする意欲はありや

 南相馬以北にも課題があります。それは観光に対する意欲。正直、あまり感じられません。

 例えば道の駅。

http://www.nomaoinosato.co.jp/index.htm
https://www.city.soma.fukushima.jp/kanko/mitinoeki.html

 国道6号線沿いにあります。私たちもここで食事でもしようかと寄るわけです。

http://www.nomaoinosato.co.jp/restaurant.htm

 これが道の駅南相馬のレストランメニューなわけですが……観光客が何を食べればいいのか……。

軽食施設
物産販売施設に併設した施設で、地元ならではの食材を使った軽食、うどん、そば、ラーメン、カレーライスなどを販売しています。

https://www.city.soma.fukushima.jp/kanko/mitinoeki.html

 相馬も同様です。

 では観光資源がないかと言えばそうでもなく、例えば相馬のほっき貝は有名で、ほっき貝の炊き込みご飯と言えるほっき飯は名物料理です。相馬の道の駅でも、ほっきコロッケは売っていましたが、どうせほっき貝を扱うならもっと大々的に商売やってもいいんじゃないかなあと。まして道の駅があるのなら。

 あとは浪江焼きそばにしても、もうちょっと売り方があると思うのです。南相馬の道の駅でも売ってはいますが、完全に埋没している。

http://frontier-minamisoma.org/karuta/42.html

 デザートなんかでも松永牛乳のアイスまんじゅうという地元の銘菓があったりしますが、あまり推されている様子もない。これ、おいしいんですよ。おいしい。地元では昔から親しまれて人気。でも福島県外での認知度は低い。こういうものを道の駅とかで観光客に勧めればいいと思うんです。

 せっかく観光インフラが整ったのだから、もう少し観光に力を入れればいいのになあと思います。せっかくの道の駅が、地元の人向けメニューだけじゃ、なんかもったいない。

http://www.nomaoinosato.co.jp/restaurant.htm

 少なくても、このメニューでリピーターが生まれるかどうか。もう一度食べに来たいと思うかどうか。もうちょっと真剣に考えてみてもいいと思うのです。

コンクリートの風景

 三陸で見た眺め。それはコンクリートの風景でありました。







 丘を登り、丘を下り、海を見下ろし、海のそばを走る。それが三陸の風景であり、リアス式海岸という地形が織りなす風光明媚な景色であったわけですが、一面真新しいコンクリートの風景となりました。これを是とするか非とするかは地元の方々の問題ですが、ひとりの観光客からすれば、決して望む景色ではありません。観光という観点で言えば、先行きが厳しいと言わざるを得ません。

海の恵みは戻り始めた

 二日目の夜は釜石に泊まりました。

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 今年も誰そ彼でお刺身をいただいたわけですが、中でも大ぶりのほたてがおいしかった。

 「四年経ってやっと出せたんだよ」

 津波から四年。やっと店主が満足できるサイズのほたてが育ったということです。

 牡蠣、ホヤ、ほたて。その他、様々な海の恵みが三陸にはあります。そうした自然があることと、コンクリートの眺めのアンバランスは誠にグロテスクで、違和感があります。

 人に手が入らないことで自然が残り、それが魅力のひとつにもなっていた三陸。しかしそこにコンクリートという人の手が入り、魅力のひとつを失いながらも津波という自然の脅威に対応していくという人の選択。

 誠に悩ましい話ではあります。しかしながらそれが前に進むということであり、それに伴う苦しみでもあります。彼の地の皆さんの選択に幸多からんことを祈るばかりです。