タケルンバ卿ブログ

世界の片隅でだらだら生きる貴族の徒然帳

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休業補償の6割は実収入の6割ではない件

 コロナウイルスに関連して、従業員を休業させる場合に一応いろいろな補助制度はできているんですよ。

 でもね、悲しいかな安いんです。足りない。なんで安いかというと、例えば雇用調整助成金では、休業させた場合の休業補償として大企業は6割、中小企業には8割を助成するんだけど、この休業補償の計算がそもそも安く出るものなのね。

 具体的に言うと、月給20万円とします。6割補償という話を聞きます。この場合、「じゃ、20万円の6割だから、12万円だ」と考えるのが普通です。もらえるはずだった収入の6割という考え方ですね。

 ところが、休業補償のベースとなる平均賃金は、次の計算式で求められます。

  • 平均賃金=休業日以前の3か月の賃金総額÷3か月間の総日数

 1月・2月・3月の各月20万円ずつで計60万円。これを1月・31日、2月・29日、3月・31日の計91日で割ります。答えは6,593円。これの6割は3,955円。1ヶ月丸々休業として、労働日数22日をかけても87,010円。本来の月給20万円から考えると、4割程度にすぎない。中小企業の特例である8割で計算したって、日当たり5,274円で、22日分として116,036円。これでやっと当初の収入の6割。

 これじゃやっていけないわけなんです。下手すりゃ家賃・水光熱費で終了。休みたくても休めない。1日でも多く休業を回避して、仕事しなければやっていけない。制度として「ないよりはマシ」であることは確かなんだけど、安心して休業できる制度にはなってないんですね。

 となると制度を休業補償ではなく、収入補償に段階を上げて考える必要があるし、一般的な有給休暇と同じような考え方で支給する必要がある。働いていれば得られるはずだった収入に対して、その6割であるとか、8割であるとかを補償するという考え方にしていかないと、会社だけではなくて労働者ももたない。

 1日あたりの上限8,330円の引き上げとかの話題も出ているけれど、問題はその上限の低さではなく、そもそも1日あたりの補償額が少なくなってしまう平均賃金の計算方法に問題があり、特例的に別の計算式をあてはめていかないともたない。

 もちろん会社によっては「やっていけない」ことをわかった上で、さらに手厚い補償制度を設けたりしているわけですが、なんせこの雇用調整助成金の申請自体がまだ滞っている段階では、補償の手厚さなど考慮に入れていない段階のところも多い、なんだか心配。社会を思って、会社を思って休業を選んだ人が、いざ給料日に明細を確認してその金額の安さにびっくり。そんな展開が5・10日ごとに起きそうで怖いです。

注意

 説明上簡便な表現にしておりますが、平均賃金の計算に用いる賃金には、通勤手当などの諸手当が含まれ、税金などの控除前の金額です。

 詳しい計算方法は厚生労働省や労働局のサイトなどで公開されているものをご確認ください。