前回は洋食屋さんのとんかつだったので、今回もとんかつ。浅草橋はおそばの激戦区と書きましたが、実はとんかつも名店が軒を連ねる激戦区。例えば駅チカエリアにはバラかつやトロかつという名物メニューがある藤芳があり、リーズナブルな価格帯ならば昨年オープンしたばかりのいちかつもある。
東側の柳橋エリアには百万石があり、西側の清洲橋通り沿いには檍もある。足を広げて北の蔵前まで歩けばすぎ田まであるし、蔵前同様に浅草橋の周辺駅という考え方で秋葉原や御徒町まで含めてしまえば、それこそ際限なく名店の名前を上げることができる。比較的良いお値段からリーズナブルな価格帯まで、浅草橋はとんかつ好きにとっては隙がない好立地。
その中で個人的におすすめしたいのがとんかつ村井。
とんかつ村井
場所は浅草橋駅の北側。あさだよりやや西側の路地裏の中といった場所。表通りに面してない分、地味な存在だけど、地味な場所でもやっていけるということは……ということでご期待いただきたい。
メニューには定番の定食から、お得な丼ものまで結構幅広い。夜なんかはお刺身などのおつまみメニューもあり、お刺身で一杯からのとんかつ締めということもできる。……このあたりのお店って、業態に関わらず夜の肴が異様に充実してるんだよな。そして初回時に注文したのは「お値段の張るものから試す」の鉄則通り特上ロース。
分厚い。ボリュームある。そして肉の断面に浮かぶ肉汁のうまさよ。
最近はなんでも「○○は飲み物」みたいに表現してしまうが、この肉汁ならその気持はわかる。が、とんかつはやっぱり固体であってこそ。肉の噛み締め甲斐がないと駄目だ。とはいえある程度柔らかくないと顎が過剰に疲れてしまい。楽しく食べ続けられない。そこである程度の肉の良さが必要となり、そもそもの素材のお肉が加熱しても過剰に固くならない上に、絶妙な揚げ加減で肉汁を逃さない程度に揚げつつ、さりとて最低限の加熱はしておくというこの仕上がりとなるわけだ。ああうまい。
正直人に説明するのは難儀な場所だが、浅草橋でとんかつとなったら一番におすすめしているのがこちら。厚切りのかつのため揚げ時間は多少かかるが、揚げ上がりをじっくり待てば絶品が約束される。待ち時間も味のうち。じっくり待って、じっくり楽しんでいただきたい。